2009-09-01から1ヶ月間の記事一覧
あなたといつも一緒に歩いてる そのひとは 誰? 数えてみると あなたとわたしの二人きり なのに 白い道の向こうを瞻るたびに 瞻るたびごとに あなたと並んでもう一人 誰かが歩いてる いつも 褐色のマントに身をつつみ 頭巾をかぶって 足音立てずにもう一人 …
鐘鐸 ハワード・フィリップス・ラヴクラフト 年年にわれ聞きぬ 黒《かぐろ》き午夜の風のかすかに 遠処《をち》よりつたへ来る鐘鐸のふかく沈めるその音韻《ひびき》 从前《かつて》看見《みと》めえし尖塔のいづれより発《おこ》るにもあらず ただ 一《と》…
一、魔書 それは暗くて埃ぶかく、埠頭のそばの 古い小道のいくすじも絡みあうなかに見失いがちで、 海のうち揚げた胡乱なものらの異臭が届き、 西風の煽りに霧の妖しくうずまく場所にあった。 霧にけぶり、霜に曇った菱形の小窓硝子ごしに、 見えたものはた…
鐘声 ドナルド・ウォンドレイ 夜すがらにわれはも聞きぬ、いんいんと鐘のなる音、 夜すがらにわれはも聞きぬ、さがなごと告ぐる律動、 たぎち沸く海みづからのこもりねの響きをよぎり、 沈みたる都市より鐘のおごそかにとよもす声を。 水うねり、ひとつの山…
ラヴクラフト『文学における超自然の恐怖』(大瀧啓裕訳・学研)の訳者解題より。 「この『ユゴスの黴』において注目すべきは、ラヴクラフトの小説、ことに後期の創造神話の佶屈した文章とは截然と異なる、実に簡明な文章で書きつづられていることである。ソ…
ウルタール、とはスカイ河を越えたところにある村の名前、そこでは何ぴとも猫を殺すこと一匹とて罷りならず、と言われるのであるが、炉辺に坐(ましま)し喉ころろかし給う猫君(ねこぎみ)をつくづく見たてまつればこそ、小生もげにさもありなんと首肯(う…
ニャルラトホテプ ハワード・フィリップス・ラヴクラフト しかして 終に 玄奥なる埃及《エジプト》よりはきたりぬ 農工民《フエラーヒン》の稽首《ぬかづ》き拝する尋常ならざる黝《くろ》き存在《もの》 寂黙痩形《じやくもくそうぎやう》 さてもまた謎めく…