"Fungi from Yuggoth" sonnet XXI

 ニャルラトホテプ    ハワード・フィリップス・ラヴクラフト


しかして 終に 玄奥なる埃及エジプトよりはきたりぬ
農工民フエラーヒン稽首ぬかづき拝する尋常ならざるくろ存在もの
寂黙痩形じやくもくそうぎやう さてもまた謎めくまでに誇厳きはだか
身まとへる織物はたものは落陽ゆるごとき紅色くれなゐ
めぐりに群集くんじゆ擁擠ひしめきて 下命を求めて猖狂しやうきやうすれど
聴きたることの意は解せずたちるまにも
邦邦くにぐにに拡がりてゆく懍然りんぜんうはさあり
いはく 野獣ばらかれ尾追したがひてかれの手を舐む と


ほどなく冥海うみより出現あらはれぬ わざはひをなす生誕者
藻がらみの黄金尖塔み立てる忘卻ばうきやくの諸土
大地裂け 狂気じみたる電霞オーロラうねりて
ゆり動く人間じんかん城砦とりでのうへに垂れこめぬ
かくして おのが戯れの偶作物をうち摧砕くだ
白痴なる混沌カオスは 地球の塵埃ちりを吹きこそ飛ばしつれ


H.P. Lovecraft "Fungi from Yuggoth"
http://www.psy-q.ch/lovecraft/html/fungi.htm
sonnet XXI