2009-09-22から1日間の記事一覧

H.P. Lovecraft "Fungi from Yuggoth" sonnet XIX

鐘鐸 ハワード・フィリップス・ラヴクラフト 年年にわれ聞きぬ 黒《かぐろ》き午夜の風のかすかに 遠処《をち》よりつたへ来る鐘鐸のふかく沈めるその音韻《ひびき》 从前《かつて》看見《みと》めえし尖塔のいづれより発《おこ》るにもあらず ただ 一《と》…

『ユゴスよりの黴』プロローグ三篇

一、魔書 それは暗くて埃ぶかく、埠頭のそばの 古い小道のいくすじも絡みあうなかに見失いがちで、 海のうち揚げた胡乱なものらの異臭が届き、 西風の煽りに霧の妖しくうずまく場所にあった。 霧にけぶり、霜に曇った菱形の小窓硝子ごしに、 見えたものはた…