『真夜中のソネット』より

 鐘声         ドナルド・ウォンドレイ


夜すがらにわれはも聞きぬ、いんいんと鐘のなる音、
夜すがらにわれはも聞きぬ、さがなごと告ぐる律動、
たぎち沸く海みづからのこもりねの響きをよぎり、
沈みたる都市より鐘のおごそかにとよもす声を。
水うねり、ひとつの山となり高き波を捲きあげ、
赤裸々に大わだつみの奥津城の秘密をあかし、
おぎろなきそれらの洞の浮かびたる鬱憂よりは、
鐘の音とよみ来たりぬ、まじなひの手管のごとく。


やがて海の水ことごとく咆哮をひとつにむすび、
大波は大波を強かに打ちのめして、ここに、
わだの原の謎のふたたび呑みこまれ、隠れをはれば、
はるか遠く岸辺はなれし海底の鐘のねいろも、
やうやうに幽けくなりまさり墓のしじまに至り、
ただ独りわれ聞くなりき、潮うねりさはぐ響きを。


The Bell by Donald Wandrei
(from "Sonnets of the Midnight Hours")

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