「そこばくのソネ」より

                ステファーヌ・マラルメ


ちさびにこそ遁避のがれたれ、美々しき自殺、
栄華のおきよ、血の泡沫あわよ、黄金くがねふうよ!
笑止なる哉、彼処かしこにて、たんきぬのひろげられ、
わが墳墓はかの空虚を荘厳しやうごんすとあらば。


いかに! かの一切なべての光輝欠片かけらだも
残存のこらざりとは、まさに夜半、われらをほが陰翳くらがり
炬火かがりびもなく、ただ、かうべなる夸慢くわまんの宝、
愛撫のあとの疲倦けだるさをうちそそぐばかり。


きみが髪なり! 常住とこしなへうらぐはしかる爾が頭髪かみよ、
しかなり、独りそれのみぞ、消失うせにしそら
あどけなき光勲くわうくんをからくもりてめおきたれば、


燦然たり、房なす髪をしとねきみのよこたふる時、
幼少わかき女皇の兜牟とうぼうかよひ、それより
散りもやせむ、爾を表象かたどる薔薇のはなびら。


Stéphane Mallarmé - Victorieusement fui le suicide beau...
(C.F.MacIntyreの英訳、および
Roger Fryの英訳、および
Hubert Creekmoreの英訳、および
Henry Weinfieldの英訳に拠る)