薔薇詩二篇

 疾める薔薇          ウィリアム・ブレイク


あはれさうめる哉。
ぬばたまの夜、吹きおらぶ
あらしのなかを翔りゆく
視えもわかざる蠕虫むしありて、


緋のよろこびのふしよと
きみをみそめつ。さてはその
くらき秘密の恋にこそ、
きみがいのちはこぼたるれ。


The Sick Rose by William Blake
http://www.online-literature.com/blake/623/



 風中薔薇           ジェイムズ・スティーヴンス


垂れては揺れつ、
  起きてはゆらぎ、
を、夢中うつつな
  ゆめみて過ぐし。


にむすぶ
  夢のごとかり、
風に吹かるる
  さうの花は。


あるはふかみの
  いをにもたり、
神意のままに
  生くる人間ひとにも。


わがてるみな
  捨離すてむと、かつは
自己われなるみなを
  得むとて、夢む。


夢中うつつなに、
  ゆめみて過ぐし、
垂れては揺れつ、
  起きてはゆらぎ。


The Rose in the Wind by James Stephens