聖母詩二篇

 頌歌             エドガー・アラン・ポオ


永貞童女
きよらなるたかくらより、おんまなこ見むかはせ給へ、
罪びとがきみへの供犠くぎとしてたてまつる
せちなる祈り、さてはまたつつましき愛に。


あした、ま昼に、ほのぐらそがれ時に、
よ! きみは聴きたまひけり、わが頌歌ほめうたを!
楽しきに、哀しきにつけ、きにつけ、しきにつけて、
われと共にましませいつも、生神せいしん


わが生の時の翔りもおもむろにして、
空にあらしの気配だに無かりしをりに、
わがたまらんならしめまじとこそ、きみは愛もて
くにへと、みもとへと導きたまひつれ。


ねがはくは、「運命さだめ」の雲に、わが現身うつそみと来し方との
おほひ閉ざされたるこの今も、
わが行くすゑには赫奕かくやく光輝かがやきあらしめたまへよかし、
御もとへの、み国へのあまき望みによりて!


(「モレラ」初出ヴァージョン
“Morella” — April 1835 — Southern Literary Messenger — (Mabbott text B)に拠る)


Edgar Allan Poe Society of Baltimore - Works - Tales - Morella
http://www.eapoe.org/WorkS/info/pt013.htm



 おん神のおん母にしてとはに変はらずをとめなる福者べあとまりあに奉るうた

                セルウィン・イメージ


高きにいますおん神のおん母ぎみよ!
われらがまさなるはらからとしておん神を生みたまひたる
したはしきをとめなる母よ おん足もとにわれらひざまづき奉る


母なるをとめよ! ここにおん足もとにふして
おんみに泣きうつたふるは おんみをしたひ奉るわれらにて
おんみの上のおんあるじのほかなに者をも誉めたてまつらず


おん神のおん自らのおん子のおん母!
おん神のおん名によりて召さるるわれら おんみにまつろひ
おんみが子らなるわれら おんみをわれらが歌にうたひまつる


いかやうにしてわれらありむ?
荒れまどふこの世を この世の薔薇ばらなるおんみの共にいまさずば
からびてくらきすゑの世まで おんみがのこり香によるとせば


Canticum Beatae Mariae deiparae semper Virgini by Selwyn Image